(公演名) METLV 「運命の力」
(日 時) 2024年4月20日(土)10:05〜
(会 場) kino cinema 神戸国際 シアター1
(演 目) ヴェルディ/運命の力
(出 演) レオノーラ:リーゼ・ダーヴィドセン(S)
ドン・アルヴァーロ:ブライアン・ジェイド(T)
ドン・カルロ:イーゴル・ゴロヴァテンコ(Br)
プレツィオジッラ:ユディット・クタージ(MS)
メリトーネ修道士:パトリック・カルフィッツィ(BsBr)
カラトヴァーラ侯爵/修道院長:ソロマン・ハワード(Bs)
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:マリウシュ・トレリンスキ
単独でもよく演奏される序曲だけでも、もうお腹いっぱいという感じなのですが、約4時間にわたる公演、もうずっとうるるとしながら見入っていました。
何がすごいって、レオノーラ役のリーゼさんの歌唱がすっごく透明感のある美しい響きで、ヴェルディのドラマティックなメロディーを、よりドラマティックに歌い上げていくのですから、たまりません。それに表情も豊かで、見ているだけでもうっとりとします。彼女がアリアを歌い終わる度に、スクリーンの中で観客たちがブラヴォー!と大きく湧いていましたが、スクリーン越しでもその感動は十分に伝わってきます。4幕の「神よ平和を与えたまえ」は圧巻でした。
アルヴァードのジェイドさんの歌唱もまた素敵です。非常に伸びやかなハリのある声で、こちらも惚れてまいますね。3幕冒頭いきなりのアリアも妙に切々と訴えてくるものがあり、グッときてしまいました。
演出のトレリンスキさんは映画監督出身なのですね。各幕の最初は映像が映し出されて、それが非常に効果的だったと思います。戦争が始まった!という部分では、戦闘ヘリが砂塵を立てて飛び上がっていく様子とかが出てきて、非常に緊迫感ある感じが伝わってきて、それがそのまま舞台上に引き継がれていくので、舞台の世界がとってもリアルなものとして引き立っていたのではないでしょうか。そして、その舞台もぐるぐると回る回転構造を巧みに利用していて、結局のところ、回転する運命の中でしか生きることはできない、というようなことを暗示しているかのようにも取れます。
そう、運命と言えば、最初に亡くなる侯爵の亡霊がその後も随所に登場してきて、それが彼ら登場人物達が皆、その運命から逃れることはできない、ということを暗示しているようでもあります。ハワードさんは修道院長との2役でしたが、運命から逃れようとして修道院へやってきたレオノーラを迎え入れるのが、父親の亡霊とも取れて、もうその時点から運命にがっちりと掴まれているということを表しているということなのでしょうか。すごく計算され抜かれた演出だと思います。
ウクライナやイスラエルでの戦争が続く現在であるからこそ、戦争の悲惨さなどを取り扱ったこのような作品が上演される意味があるのでしょうね。戦争万歳!なんていうシーンもありましたが、反面教師的な意味合いで捉えられるべきものでしょう。
それにしても、今季はやたらと「Destiny」とか「Freedom」という言葉が出てくる作品が多いですね。そういうワードや戦争の無意味さという観点からも、どうしても「ガンダムSEED Freedom」を連想してしまうのは私だけ…でしょうね…
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