(公演名) METオーケストラ来日公演
(日 時) 2024年6月22日(土)15:00〜
(会 場) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
(演 目) ワーグナー/歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
ドビュッシー/歌劇「ペレアスとメリザンド」組曲
(ラインスドルフ編)
バルトーク/歌劇「青ひげ公の城」(演奏会形式)
(出 演) メゾ・ソプラノ:エリーナ・ガランチャ
バス・バリトン:クリスチャン・ヴァン・ホーン
ヤニック・ネゼ=セガン指揮METオーケストラ
私が初めてMETのライブビューイングを観たのは2009-2010年シーズンの「カルメン」で、この時の公演でMETデビューをしたのが指揮者のセガンさんで、またこの公演をきっかけに大ブレイクしたのがガランチャさん。そのお2人が来られる!というだけで、私にとっては何か運命的なものを感じずにはいられません(?!)。チケットを販売開始と同時に即購入したのでした。(^^;
何せ、普段はスクリーン上でライブビューイングで観ているだけですからね、いつもMCの方が「Come to the MET, or Visit your local opera company」と、ライブで鑑賞することを勧めていますが、今回、まさに地元の劇場で、それもMETそのものを味わうことができるのですから、これほどの体験はそうそうないことでしょう。
さて、プログラムはさすがMETらしく、オペラものがずらりと並んでいます。そしてそれぞれに実に表情をつけて演じ分けているという印象がします。最初のワーグナーは、METでも時折ワーグナーも上演するだけのことはあって、実に重厚なサウンドをホールいっぱいに響かせています。金管の音色が分厚くて、それがほんとにホール中にふわぁっと響いていく感じ。もうそれだけで泣けてきてしまいます。それに追い打ちをかけるように続いてのドビュッシーはまた打って変わって、流れるような、あるいは波打つようなサウンドが響きます。ドビュッシーのオペラって、あまりMETで上演するというイメージがないのですが、それでも、ドビュッシーならではの印象派らしい、本当に波が折り重なるような感じで、音楽が流れていました。弦楽器の流れの上に乗る木管の音色が印象的でした。
でも、やはり後半の「青ひげ公の城」が一番の聴かせどころでしょう。ソリストのお2人が最初に出てこられないから、あれ?と思っていたのですが、冒頭のナレーションが流れているところで、上下のソデからスッと入ってこられました。ほっとする間もなく、2人のやりとりが始まります。何といってもガランチャさん! 上記の「カルメン」以来のファン(一応…)なので、彼女の生声を聴くのを楽しみにしていたのですが、これがまたたまりません。ふくよかなと言うか、豊潤なと言うべき声で、好奇心旺盛な(?)ユディットの心情を存分に歌い上げています。繊細さと同時に力強さも持っている彼女の声だからこそ、微妙に揺れ動くユディットを演じることができるのでしょう。アリアがないのが残念な気もしますが。緊迫感あふれる青ひげとの対話は、瞬きするのを忘れるほどのものでした。対するホーンさんもまた、どこか残忍な感じのある毅然さというものを持って滔々と歌い上げていると言う感じです。それに何よりもオーケストラ全体が、前半の2曲以上に実に伸びやかにまた表情豊かに音色を響かせているのです。オケの音を聴いているだけでもストーリーの展開というものが分かるような、実にメリハリのある演奏です。ソリストの2人が加わったからこそ、普段のオペラ公演時以上に張り切っている?という感じもします。普段はピットの中に入っていてあまり見ることはできませんが、今回はまさにステージの上で照明を浴びながら演奏しているのですから、張り切らないわけがないですね(たぶん)。特に第5の扉が開かれるシーンでは、もうパワー炸裂!という力強さを存分に聴かせてくれました。ホールの客席1階横の場所にバンダの金管も入ってきて、さらに会場全体を盛り上げてくれて、まさに青ひげの威光をより強く表しているようでした。この演出は演奏会だからこそできるものなのかもしれませんが、ホール中が鳴り響いていました。そして、そういう演奏にぐっと引き込まれるように聴き入っていたせいか、1幕もののオペラであるにせよ、あっという間に終わってしまった感じがします。もっと聴きたかった…
さすがにこれだけの熱演でしたから、アンコールはなしでした。セガンさんも最後に「アリガトウゴザイマス!」と日本語でご挨拶してくれて、その後、「これだけの演奏をしたからもう演奏でけへん、明日また別のプログラムを演奏するから、また明日来てや!」というようなことを仰っていました。それでも、何かアンコールで演奏してほしかったかも… それに、私は明日は聴きに来れないし。(ちなみに、明日はMETのライブビューイングを映画館で鑑賞する予定です) 明日のマーラーの5番も聴きたかったです。
という感動を胸に、久しぶりの外国オーケストラの演奏会を存分に堪能させていただきました。
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