(公演名) METLV 「ホフマン物語」
(日 時) 2024年11月10日(日)10:45〜
(会 場) kino cinema 神戸国際 シアター4
(演 目) オッフェンバック/ホフマン物語
(出 演) ホフマン:ベンジャマン・ベルナイム(T)
4人の悪役:クリスチャン・ヴァン・ホーン(BsBr)
ニクラウス&ミューズ:ヴァシリーサ・ベルジャンスカヤ(MS)
アントニア&ステラ:プレティ・イェンデ(S)
オランピア:エリン・モーリー(S)
ジュリエッタ:クレモンティーヌ・マルゲーヌ(MS)
4人の使用人:アーロン・ブレイク(T)
指揮:マルコ・アルミリアート
演出:バートレット・シャー
さて、今年もまたMETライブビューイングの新シーズンが始まりました。今シーズンは人気作品が並んでいるのがまた嬉しいですね。初回は「ホフマン物語」です。
主役のホフマンは、昨年の「ロメオとジュリエット」でロメオ役を演じたベルナイムさん。アラーニャさん似の、軽やかにすぅっと上に伸びていくような声の響きは健在で、それが悩める男の姿というものに妙にハマっているような感じがします。彼独特のフレンチスタイルというようなものが、こういう役に合っているのでしょうね。
そして、何と言っても、今回新たな発見というべきものは、ニクラウスとミューズの役をこなしていたベルジャンスカヤさん。今回がMETデビューであり、また同役のデビューでもあったそうですが、低音から高音まで実に美しく響いてくるのです。元々はソプラノで、それがメゾに転向してきたそうですが、低音域の響きが半端なくずっしりとしていて、そこからすっと美しく伸びていく高音の響き、むっちゃ感動しました。ミューズの役とズボン役とを行き来して、また時には悪役にも寄り添うような何とも不思議な役回りでしたが、複雑な感情見たいなものを表情豊かに演じていたように思います。…惚れてしまいました。。今後も注目していきたいと思います。
その悪役のホーンさんと彼女が、どこか仲間であるかのように接しているのが、何か不思議な感じもしたのですが、これは、彼ら2人が実はホフマン自身の内にある2つの気持ちであり、悪と正、それらが彼を引っ張りあうような、そのような存在であるということなのですね。シャーさんの演出がそうさせているわけで、そう考えていくと、この作品の魅力というものが一層増して見えるような気もします。特に第3幕の退廃的な雰囲気というものは何とも言えず、そこから最後はミューズに導かれホフマンも芸術に真摯に向かい合おうとする、というのが、まさに悪と正のなせる技というものなのでしょうか…
他に印象的なのは、オランピアさんのモーリーさん。彼女の超高音には圧倒されました。かつてのN.デセーさんの演奏も参考にしたと仰っていましたが、「歌う女優」とも言われたデセーさんと同様、難しい高音も難なくこなしながら、機械人形の役もコミカルに演じていました。圧巻でした。
今回は指揮者のアルミリアートさんのMET上演500回記念だったそうで、それもまたすごいことですね。かのトスカニーニも400回だったそうで、彼を超えた!と冗談も仰っていましたが、いや、本当にすごいことだと思います。これまでもライブビューイングでも何度もお見かけしてきましたけれど、ほんと、おめでとうございます。これからもますますのご活躍を期待したと思います。
期待と言えば、もう一つ、昨シーズンで引退されたたパルンボさんの後を継いで、今シーズンから合唱指揮をされるのがT.ミヒャエルさん。お若い方のようにお見受けしましたが、それでなくても技量のあるこの合唱団をさらに高みに導いてくれるものと、今後に期待していきたいと思います。
今後の楽しみばかりの今作で、新たなシーズンが始まった感じです。また1年間、楽しみたいと思います。
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