2025年5月3日土曜日

METLV 「フィデリオ」

(公演名) METLV 「フィデリオ」

(日 時) 2025年4月26日(土)10:55〜

(会 場) kino cinema 神戸国際 シアター1

(演 目) ベートーヴェン/フィデリオ

(出 演) レオノーレ/フィデリオ:リーゼ・ダーヴィドセン(S)

      フロレスタン:デイヴィッド・バット・フィリップ(T)

      マルツェリーネ:イン・ファン(S)

      ロッコ:ルネ・パーぺ(Bs)

      ドン・ピツァロ:トマシュ・コニエチュニ(BsBr)

      ジャキーノ:マグヌス・ディートリヒ(T)

      指揮:スザンナ・マルッキ

      演出:ユルゲン・フリム


 今シーズン中、前作の「アイーダ」を観に行けなかったので、今回の

「フィデリオ」はちょっと気合い入れて観てきました。


 主演は、前々作の「トスカ」でも圧倒的な主演を果たしたリーゼさん。愛を貫き通すという意味では、「トスカ」や昨シーズンの「運命の力」のレオノーラとも通じる部分もあるのかもしれませんが、今回は、前2作とは違って、悲劇ではないのが救いですね。変わらぬ存在感と情感たっぷりに歌い上げていく様は、相変わらず圧倒的です。第1幕の長大なアリアも、ロングフレーズを何の苦もなくすぅっと息たっぷりに歌っていて、実に聴きごたえのあるものでした。彼女が歌うたびに拍手したくなる、そんな劇場の観客の気持ちもよく分かります。そして、凛とした雰囲気で、最後は高らかに愛と正義の勝利を歌い上げる、それだけでもう何か泣けてきます。悲劇の女性を演じていた彼女が、今回は悪を完全に倒して勝利を得た、というだけで感慨もひとしおです。


 また、私としては、もはやレジェンドと言ってもよいルネさんを久しぶりに拝見することができたのが、嬉しかったです。年月を感じさせるようなお姿ではありましたが、その美声はまだまだ健在ですね。心根の優しいお爺さん、という雰囲気をたっぷりと出しながら、実に愛情のこもった歌唱を聞かせてくれました。


 フロレスタンのデイヴィッドさんは第2幕だけの登場だからか、力たっぷりで実に伸びやかな声を聞かせてくれました。絶望から歓喜へと表情が移ろいでいくのを、また見事に演じていたように思います。


 そして、マルツェリーネとジャキーノのコミカルなやり取りが実に可愛らしかったですね。2人とも自由奔放な感じで、お互い噛み合わないやり取りを、それでもしっかりと聞かせながら歌っていたように思います。


 今作は、不当な圧制からの自由と解放というものがテーマで、今のような世界情勢だからこそ、上演することに意義がある、というようなことをゲルブ総裁が仰っていました。不当に「力」を持って、何の罪もないような人々を弾圧・攻撃していくような勢力に決して屈することなく、たとえどんなに小さな個人の力であっても、それに対決していけば、いつかそれは必ず報われる、その先に必ず「自由」や「平和」が訪れるはずだ、というメッセージは、確かに今の時代だからこそ、私たちの心に響くものです。だからこそ、最後の大団円は実に素晴らしいものでした。やはりこうでなきゃ、という感じです。このラストのぱぁっとしたシーンの雰囲気が、どこか「魔笛」のラストにも似ているような感じもして、やはり勧善懲悪な展開はいいですね。


 ところで、リーゼさんは双子の出産を控えていて、今作が終わると産休に入られるのだとか。来年にはまた、「トリスタンとイゾルデ」で戻ってこられるとのことですが、無事にご出産されることを切に祈りたいと思います。



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