(公演名) 能狂言「鬼滅の刃」
(日 時) 2024年8月24日(土)13:00〜
(会 場) SkyシアターMBS
(演 目) 新作能「鬼滅の刃」
(出 演) シテ方:大槻文蔵(累)
大槻裕一(竈門炭治郎/竈門禰󠄀豆子)
狂言方:野村萬斎
(鬼舞辻無惨/竈門炭十郎/鱗滝左近次/天王寺松右衛門)
野村裕基(我妻善逸/錆兎/手鬼)
野村太一郎(嘴平伊之助/鋼鐵塚蛍/手鬼)
ワキ方:福王和幸(冨岡義勇)
地謡:赤松禎友(累母/蜘蛛の鬼(母))
齊藤信輔(累父/蜘蛛の鬼(父))
高野和憲(真菰/うこぎ/手鬼)
深田博治(どんぐり丸/手鬼)
中村修一(手鬼/人面蜘蛛)
内藤進(手鬼/人面蜘蛛)
笛:竹市学
小鼓:成田達志
太鼓:亀井広忠、林雄一郎
地謡・後見:武富康之、上野雄介、稲本幹汰
後見:月崎晴夫
2年前でしたか、野村萬斎さんが演出などをされて、あのアニメが大ヒットした「鬼滅の刃」を能狂言に仕立てたというニュースがあって、ぜひ見てみたいものだと思っていたのですが、それが、この度、大阪の新しい劇場でかないました。今までの能楽堂と違って、普通のシアター・舞台ですので、演出もまた新しいものになるようで、これは期待できそうだと思い、観てきました。
全体の感想を言うと、むっちゃ良かった!の一言に尽きます。アニメでは色々とk細かく丁寧に描かれているものが、能舞台でシンプルな動きで、奥深い表現をしているので、作品の重みというか、すっごく味わいのあるものになっていたと思うのです。
一番印象的なのは、禰󠄀豆子が一人で舞うシーン。「白雪」というタイトルにありましたが、彼女が眠りながら見ている夢の中で、ありし日の平和と突然襲われた悲劇を回想して舞うのです。舞の魅力が凝縮されたような感じで、とても美しく見えました。これぞ幽玄の世界、という感じでしょうか。
また、冒頭の「日の神」の舞も見応えがありました。さすが、野村萬斎さんということなのかもしれませんが、炭治郎役の大槻裕一さんと二人で舞うことで、神楽の舞を親から子へとつないでいくことをはっきりと表していて、それがその後の無惨との戦いに繋がっていくということを示しているのですから、最初にこの舞が置かれたのは、物語のベースの部分を築くということでもあったのでしょうね。実際、一番最後では、無惨がはっきりと炭治郎を指して、あいつを倒せ!って言っていましたし。
また、最後の累との決戦のシーンは外せないでしょう。能の「土蜘蛛」は昔に見たことがありますが、ほんと、それを彷彿とさせるような、糸を繰り出しての戦いは迫力がありました。大槻文蔵さんの類は、もうそこにいるだけで重圧感があるような、むっちゃ存在感のある感じで立たれているので、本当に強そうなオーラが出ていました。
狂言の場面はやはり楽しかったですね。三羽の鳥たちの宴?はアニメにもない話ですから、本当にオリジナルの創作。実際にこんなシーンがアニメなんかにもあったら楽しいでしょうね。
全体を通じて言えるのは、この作品のテーマ「人も鬼、鬼も人」ということがはっきりと伝わってくるということでしょうか。特に無惨の独白のシーンで、自分が鬼になった経緯を語っていますが、それで不老不死の体を手に入れながらも、生きたい、死にたくないという、やや弱みなことを語っているのが印象的です。アニメでは絶対にそんなこと言いそうにないですものね。そういう「哀」みたいなものが見えるからこそ、能狂言で表現する意味合いがあるのだとも思います。人の怨念とか哀愁とかを表現するのは能の大きな魅力でしょうし。
それにしても、太鼓と笛の音が鳴っただけで、すっごく心がわくわくして、まさに高揚感いっぱいになるのですから、能っていいなと改めて思いました。そして、次はぜひ「遊郭編」を能狂言で作ってほしいなと勝手に思ったりしています。あの話ほど兄と妹の絆を考えさせられるものはないように思いますし、ド派手でなくてもあの戦闘シーンは見せどころになるでしょうし、反物の攻撃なんかは今回の蜘蛛の糸攻撃と同じような感じでできるような気もしますし、…考え出したら、ますます見たくなってしまいます。そんな作品がもし今後上演されたら、絶対にまた行きたいと思います。
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