(公演名) 神戸市混声合唱団 秋の定期演奏会
「現代の祈りといにしえの世俗」
(日 時) 2024年9月28日(土)14:00〜
(会 場) 神戸文化ホール・大ホール
(演 目) ダウランド/帰っておいで
御婦人向きのすてきな小物
モンテヴェルディ/私を死なせて
西風が戻り、素敵な季節が戻ります
ハスラー/踊れ、跳べ
パスロー/うちの亭主はお人好し
バンキエリ/動物たちの対位法
ジャヌカン/鳥の歌
モンテヴェルディ/私は若い娘
私は死んでしまいたい
松下耕/混声合唱、室内オーケストラ、ピアノのための「レクイエム」
阪神淡路大震災30年への祈り
来年は阪神淡路大震災から30年の年。それを前にして、素敵な曲が生まれました。それが今回、神戸市混声合唱団が松下耕さんに委嘱・初演した「レクイエム」。同合唱団のこれまでの歴史の中で、作品を委嘱するのって、今回が初めてなのですね。それも震災30年の節目を前にしてのこと。これは本当に記念すべき演奏会になることでしょう。
作品は、鐘の音から始まります。その響きが、どこか希望の鐘の音色のようにも聞こえて、それだけでもう、うるっとしてしまいます。死者への追悼の面持ちのするIntroitusが終わると、やや力強い感じのKyrie。そしてDies irae。これがもう、たまらなく格好いい!と言ったらちょっと変かもしれませんが、すごく高揚感を煽られるような曲。モーツァルトやヴェルディのとはまた違う、でもそれらに匹敵するくらいの激しい曲調が、たまりません。突如として現れる、不思議な音色のラッパ。これがまた唐突な感じもしながら、すごく印象的です。ソプラノとベースのソロも挟みながら、曲は高揚感を維持しながらも終わり、次のLacrimosaはまさに涙の曲調。切々と涙するような旋律が美しく、ほんまに泣けてきます。Sanctusは、ちょっと雰囲気が違うような感じで、何か軽い?とも思ったのですが、Benedictusを経てのHosannaコーラスは荘重な感じに盛り上がって、このダイナミックな変化はさすがです。Agnus Deiは途中にゾリを入れて、静かに平穏な感じで、そのままの雰囲気でLibera meへ突入、と思っていると、何か途中でだんだんとこのLibera meが次の最終章への行進曲のように聞こえてきて、ぐんぐんと歩みを進めて昇華していくような感じが。そして最後のIn Paradisumでは、音楽の中に神々しいまでの光がはっきりと見て取れるような感じにとらわれます。これこそ本当の祈りの境地とでもいうべきものなのかもしれません。神の愛に満ちた世界、その眩しいばかりのきらきらとした光が音楽を通して見えてくるようで、自然と涙が出てきてしまいました…
弦は1プルトずつで、管も1管編成という、本当に小編成のオーケストラでしたが、鐘の音とか、あとピアノの音なども非常に効果的に使われていて、これだけでも十分に音楽の力が伝わってきます。いや、本当に素晴らしい作品でした。そして素晴らしい初演だったと思います。ぜひ、来年1月に再演してほしいなと思います。
なお、前半はルネサンス期の世俗曲がずらりと並んでいます。モンテヴェルディやジャヌカンなど、お馴染みの作曲家の作品が並んでおり、アカペラの美しさというものを存分に堪能することができました。失礼かもしれませんが、改めて、神戸市混声合唱団の力量を知れて、良い合唱団に育ってきたなと思います。
来春は阪哲郎さんが指揮者として登場されるとか。こちらもまた楽しみです。
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